自由研究について
「自由研究はできない。でもやらなくてはいけない」ということで、お金を払って、自由研究を代行してくれる業者に頼むという話も聞きます。が、そのような自由研究を提出しても、例えば、中学受験の面接時には見抜かれてしまい、逆効果でしょう。なにより、自分でやっていないものを自分のものとして提出してしまった場合、「ずるをしてもいいんだ」という価値観を与えることになりかねません。
*自由研究について共働きwithで取材していただきました。
自由研究は「自分のやりたいこと」をやろう
小中学生の自由研究で「学術的に新しいこと」をやる必要はなく、「自由研究をやる前にはわからなかったこと、知らなかったこと」について、自分なりに実験をし、何らかの結果を得て、そこから、自分なりの「答え」を得ればいいと思います。
研究に失敗はありません。思うような結果が出なかったとしても、「こうしたら、予想とは違う結果になった」という結果が得られたわけです。そこで改良点を自分なりに考えることが出来れば、それで十分ではないでしょうか?
自由研究のポイント
いくつかのポイントを押さえれば、自由研究は簡単にできます。逆にポイントを押さえていないと、単に「やってみました」というだけで、研究にはなりません。以下、ポイントを述べていきます。
あなたの知りたいことは何ですか?
「宇宙の成り立ちを知りたい」としても、小中学生が夏休みの自由研究として行って結果を出すには無理があります。最終目標は「宇宙の成り立ちを知る」だとしたら、そのために必要なことをまずは調べてみましょう。望遠鏡の仕組みを調べて、レンズの大きさと見え方について実験するのもいいでしょう。宇宙から届く光について調べるということで、「紫外線は何を通って、何を通らないか」ということを実験するのもいいと思います。最終目標に近づくために、今、自分自身が実際にできることを考えましょう。そして、その疑問を解決するために必要な実験を考えましょう。
工作と実験は違う
大人になってから必要なのは、「すでにわかっていることを、自分でもやってみる」ことではなく、「わからないことについて、条件を変えて試行錯誤する中で、わかるようにしていく」ことです。
単に「望遠鏡を作りました」は工作であり、研究ではありません。望遠鏡を作ったなら、望遠鏡からの距離を変えて見え方がどのように変わるかなどを、実際に確認していき、距離と見え方の違いについて自分なりの結論を得ることが「研究」です。
自由研究本に載っていた実験をやるだけでは、研究ではありません。なんらかの条件を変えていくつかの実験を行い、条件による結果の違いから、「どうしてそうなると考えられるのか?」ということをまとめましょう。例えば、「卵白を泡立ててメレンゲにする」ということを「実験」にする場合、「砂糖の量や、砂糖を入れるタイミングによって、メレンゲに違いが出るか?」というように、条件を変えて結果を調べることができます。
キットを使っての実験もいいのですが、何らかの条件を変えて、違いを見てみましょう。
再現性
研究において大切なのは「再現性」です。再現性とは、「次にやった時も同じ結果になるし、他の人がやっても同じ結果になる」ということです。
例えば、「温度によってシャンプーの泡立ちが違うのか?」という実験をしたとしましょう。この実験方法として「シャンプーにお湯を入れてよく混ぜた時と、水を入れてよく混ぜたときの違いを調べた」とだけ書いてあったら、他の人はこの実験をまねできるでしょうか?実験方法は、「それを読んだら、実験をする前の自分自身が迷わずできる」ように書く必要があります。
「○○(商品名)1mLを500mLのペットボトルに入れる。10℃の水100mLを加え、上下に30回振る。次に、水ではなく50℃のお湯で同じことをする。」と書いてあれば、まねはできそうですね。
数値化
再現するときに必要なのは、「数値化」です。上記の実験で、シャンプーの量や温度が数値化されていなかったら、まねはできません。量や温度、そして時間など、数値で表せるものは、数値で表すことが大切です。
水には冷たい水も温かい水もあります。「お湯」は何度から「お湯」なのかは人によって違いそうです。このように、人によって判断が変わることは必ず数値化する必要があります。
amazonなどで、0.01gまで測れるデジタルスケールがあります。またデジタル温度計もあります。このようなものを利用して、数値化していきましょう。
pH試験紙などもあると、水溶液の実験の時にはいいですね!
変える条件は一つ
「10℃の水よりも60℃のお湯の方が、泡たちが良かった」という結果になったとしても、入れたシャンプーの量が違えば、その結果は信用できませんね。水の温度による泡たちの違いを調べたかったら、変えるのは「温度」だけにしなければなりません。シャンプーの量や、水(お湯)の量、振る回数は同じにします。
結果と考察は違う
「結果」は実験で得られた事実です。実験をする人の意見を入れてはいけません。グラフや表を利用して、わかりやすくまとめましょう。グラフを描くときは、「縦軸と横軸の単位は何か」、「縦軸と横軸は何を示しているのか」をきちんと書きましょう。
「考察」は「どうしてそのような結果になったのか」ということを、自分で考えて書きます。ここは自分の意見を書きましょう。小中学生の場合、学術的に正しい必要はありません。ただし、すでにどのようなことがわかっているのかを調べて、ちゃんとした根拠を持って書く必要があります。
例えば、紫キャベツの色変わり実験をした場合、「石鹸水を入れたら青色になった」は「結果」です。
本を調べると「紫キャベツ溶液の色はアルカリ性や酸性になると変わる」ということがわかりました。このことと実験結果を合わせて、「石鹸水はアルカリ性であることがわかった」というのが「考察」です。
繰り返しになりますが、考察は、すでに分っている科学的事実をもとに、「なぜそのような実験結果になったのか」ということについて自分の考えを書くことです。もしも実験結果が予想と違うことになっても、「自分はこうなると思っていたけれども、結果は違った。それは、こういう理由だと思う」ということが書ければ、立派な自由研究になります。
「参考」はちゃんと記載する
考察をするときには、何かを参考にしましょう。インターネットでもいいのですが、小中学生の場合は、できれば本を参考にした方がいいと思います。そして参考にした本は、タイトル、著者、出版社、出版年を記載しましょう。インターネットの場合は、ページのタイトル、URLを記載します。
まとめ方
模造紙にまとめる時も、レポートにまとめる時も下記のことを書くようにしましょう。
- その研究をしようとおもったきっかけ、これまでにわかっていること
- 自分の実験で何を明らかにしようと思っているのか
- 自分ではどうなると予想しているのか
- 実験材料(重さや量は数値化すること)
- 実験方法(他の人が迷わずマネをできるように)
- 実験結果(わかりやすいように表やグラフにまとめましょう。グラフの場合は縦軸と横軸が何を示しているかを書きます。単位も忘れずに)
- 考察(どうしてそのような結果になったのかを自分なりに考えて書きましょう)
- 今後の課題(書かなくてもいいです。今回の実験で、足りなかったことや、こうすればよかったと思ったことがあればここで書いてもいいです)
- 参考(調べるのに使った本を記載しましょう)